篠笛草子 〜 ほのかに聞こゆるもいとをかし 〜

日本に古くから伝わる竹の横笛「篠笛(しのぶえ)」の随筆。篠笛奏者で篠笛文化研究社代表の森田玲が綴ります。
Essey about "Shinobue" transverse bamboo flute in Japan,by Shinobue player Akira Morita.

(株)篠笛文化研究社が運営するブログです。

2017年08月

8月16日。今年も家族で「五山の送り火」に参りました。

日頃「あっ!ここよう見えるやん!覚えとこ!」とベストポイントを見つけるのですが、当日になって正確な位置を忘れてしまい、確認しようとするも真っ暗で(点火は20時)毎年あたふたしてしまいます(笑)。

今年は、鴨川の二条大橋の少し北側に・・・夜空に美しく大の文字が浮かび上がりました。
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「大文字焼き」と呼ぶと現在の京都では違和感が持たれます。実際、山を焼いているではなく、大松明に点火して「大文字」「妙法」「船形」「左大文字」「鳥居形」を象ります。

ちなみに江戸期には旧暦7月16日の日取りでした。旧暦の15日はほぼ望月で、翌日も夕刻の早いタイミングで東山から丸いお月様が登ります。そのため、かつては「大文字」と「満月」はセットで認識されていました。


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<大文字山(東山如意ヶ嶽)の山の端に月が見えます(森田玲『日本の祭と神賑』より)>

「新暦と旧暦の違い」は、日本の祭を考える上で大切な内容です。これについては、機会を改めて詳しく述べたいと思います。


話を戻します。それでは、この「五山の送り火」の目的は何かご存じでしょうか?

この行事は、その名の通り祖霊(精霊)を送るために行なわれます。

よく知られている海や川での「精霊流し」と同じ意味合いの行事です。

そして、「送り火」があれば「迎え火」もございます。
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写真は昨年のもの。うちの玄関で「迎え火」を焚きました。
桜が「誰かきた!」と言った時には、さすがにびっくりしました。

古くは「送り火」も、このような各戸で行なっていたと思いますが、京都では、それが大々的になりました(私は「神賑化」と呼んでいます)。

「お盆」(盂蘭盆会)というのは仏教用語ですので、「送り火」も仏教行事のような気がしますが、純度100%ではございません。

日本教の仏教割りカクテルと言ったところでしょうか・・・

オリジナルの仏教は「輪廻」から逃れるために「解脱」することが目的で、そのために様々な修行が行なわれます。輪廻転生の概念では、亡くなった人は何かに生まれ変わっているわけですから、祖霊の存在を認めていないことになります。

日本のお盆には、仏教伝来以前の宗教観が反映されています。

すなわち「カミ迎え」「カミ祀り」「カミ送り」の三部構造です。

このような三部構成は日本の様々な行事でみることができます。

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(森田玲『日本の祭と神賑』より)

日本におけるカミは「畏れ多いものすべて」を指します。つまり、ここではご先祖様の魂もカミと解されます。

何らかの方法でカミ(祖霊)をお迎えし、供物と読経を奉ります、そして何らかの方法でカミをお送りします。

盆踊りと言えば「盆踊り」。これは、生きている人々と祖霊が交歓する行事であることが多く、その場合は「カミ祀り」に含まれます。

話が少し込み入ってきました・・・

カミ様をお迎えするために、一般的に用いられるものが「火」です。これはお盆に特有のものではなく、神社の祭でも一般的で、御神灯と同じ役割です。


京都では「迎え鐘」と「送り鐘」もよく知られます。

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私は毎年、六波羅にある六道珍皇寺の「迎え鐘」に参っています。こちらには閻魔様の像がございます。閻魔様に仕えた平安時代初期の小野篁(おののたかむら)は、境内にある井戸から冥界に通ったとされています。

昨年まで、閻魔さんにビビっていた桜ですが、今年は「ちょっと待ってて!ひとりでお参りするから!」と・・・成長にびっくりです。

「送り鐘」は、寺町三条にある「矢田寺」が有名です。

こちらは「カミ迎え」と「カミ送り」に「火」ではなく仏教的?な「鐘」を用いています。

なくなった人の祀り方は国や地域によって様々です。日本ではご先祖様のお祀りは仏教(日本化された)にお任せされていますが、その根本には仏教伝来以来の宗教観が脈々と受け継がれているように感じます。

初めて笛を始める方は、竹の篠笛プラスチィック製の篠笛(プラ管)どちらを買うか迷う方も多いと思います。


玲月流の教室ではプラ管からお稽古を始めますが「竹の笛が欲しい!」という方も少なくなりません。

実際のところ、竹の笛がバンバン売れた方がうちは助かるのですが(笑)、幾つかの理由で、まずはプラ管をお勧めしています。


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プラ管→詳細

<竹の笛には良くも悪くも癖がある>

篠笛の材料である竹は天然の植物ですから、その内径や外形、密度、また傾斜の角度(端から端まで徐々に細くなる)も様々です。また、歌口や指孔も一つ一つ手であけていきますので、見た目は似たような雰囲気でも、どれ一つとして同じものはありません。

一方、吹き手の側も、歯並びや唇の形、呼吸法方に個性がありますので、自ずから、その息づかいが変わってきます。

このように、篠笛が良い音が出るかどうかは、楽器と奏者の相性に依存します。


自分自身にとって、最も馴染む竹を手に入れること、これが笛吹きの大きな目標と言えます。しかしながら、初めて笛を吹く人は、安定した口の形や呼吸を保つことができませんので、どの笛が自分に合っているかわかりません。

プラ管は各メーカーから幾つか発売されています。

篠笛文化研究社では、笛師が型を作り、その構造をホンモノの篠笛に近づけたものを取り扱っております。これは、大量の竹笛の導入が難しい学校教育の現場用に開発されたものです。


プラ管は、試行錯誤の結果、多くの人にとって吹きやすいように調整されています。ただし、言ってもプラ管ですので、音の響きがやはり物足りません。何より、吹き込めば吹き込むほど育っていく竹の笛に比べると、味気なさは否めません。

プラ管と竹笛についてわかりやすく述べると、

<竹笛> 30点〜150点 1万円〜4万円程度
<プラ管> 80点  2000円程度

(竹の笛も安すぎるものは玩具に近くおすすめできません)

玲月流では、まずはプラ管で慣れてもらって、3ヶ月から半年ほど経って少し笛の善し悪しを判断することができるようになってから、複数の竹の笛の中から、自分に合ったものを選んでいただくことをお勧めしております。

ここで選んだ竹の笛を、笛の表面が飴色にあるまで使い込むと、瑞々しい音が溢れ出るようになります。

竹の笛を早く吹きたいところですが・・・

これから篠笛を始められる方は、まずはプラ管から!

京大生協発行の『らいふすてーじ』(2016年1月号)に私のインタビュー記事を掲載いただきました。

私のゼロ歳から39歳までの感動!?の物語が、
京大生の素
晴らしい編集能力によって4頁に凝縮されておりますm(_ _)m

<掲載時は社名が「民の謡」ですが、2017.6.1より「篠笛文化研究社」となっております>

PDF→
http://www.s-coop.net/lifestage/backnumber/2015/pdf/1601_00-03.pdf
らいふすてーじ

篠笛は、祭を出自として、江戸期に歌舞伎の世界に採り入れられ、明治以降は篠笛単独の演奏会も催され、現在では様々な分野で演奏されています。篠笛に対する想いは、地域や流派、個人によって様々。

どの先生(団体)から習うかによって、演奏する曲目や奏法などが大きく異なりますので、はじめて篠笛を始める方は迷われるかと思います。

ここでは、玲月流(篠笛文化研究社)の方向性をお伝えします。

新刊『日本の音 篠笛事始め』の「はじめに」で詳しく述べていますので、以下に本文を引用いたします。

ご参考になれば幸いですm(_ _)m。

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はじめに 森田玲『日本の音 篠笛事始め』より
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笛たいこ はやしの中の神祭(かみまつり)   とっぱ日よりを祈る一むら 村社笛太鼓
                        
  皆さんの地元にはお祭はありますか。この歌は、江戸時代の狂歌師、唐衣橘洲<からころもきっしゅう>が詠んだ歌です。「囃子」と「林」(鎮守の杜<もり>)、「とっぱひより」(笛の音ヒャラリ)と「日和」(晴天)を掛詞として、祭の風景と人々の心を巧みに表現しています。「村の鎮守の神様の今日はめでたい御祭日~どんどんひゃらら」と歌われる有名な学校唱歌「村祭」の原形のようでもあり、郷愁を誘います。

 ピーヒャラ・ドンドン、篠笛は、太鼓とともに我々日本人に最も馴染みのある楽器です。ヒョーと響き遠音のさす透明な音色と、ピロピロと鼓膜に響く指打ち音は、世代を越えて共有される日本の音と言えるでしょう。

 篠笛は、竹に孔を開けただけの簡単な構造の横笛ですが、多様な表現に応え、祭囃子をはじめ様々な歌舞の音曲に用いられます。明治以降は、篠笛そのものを主役とする演奏会も多く催されるようになりました。

 私の篠笛の原点は、地元の祭で聴いた笛の遠音です。大学時代に他地域の祭や舞台で奏でられる篠笛を知り、その音色に改めて惹き付けられるようになりました。その後、笛屋の店主として多くのお客様と会話を交わし、また、篠笛奏者として舞台に立ちながら、二十年にわたって篠笛教室で指導を重ねて参りました。本書は、これらの活動の中で培った、私の試行錯誤の集大成です。

 篠笛は他の楽器と比べて、特に難しいものではありませんが、やはり闇雲に吹き続けるだけでは、良い笛の音は出ません。本書では、篠笛に初めて触れる人でも迷わず学べるように、基本中の基本から、図表を用いて詳しく解説しました。また、経験者に役立つ情報も多く盛り込んでいます。

序章 篠笛らしい音を目指して
 まずは、どの曲を吹く時にも心がけたい「篠笛らしい音色とは何か」について確認します。

第一章 奏楽の基本 音を出す 
 次に、音の出し方、笛の構え方など篠笛の基本を学びます。吹かれる場面や流派によって考え方は異なりますが、本書では、祭囃子の雰囲気を残しつつ、舞台での表現に耐え得る実践力の習得を目指します。

第二章 篠笛楽譜 曲を奏でる  
 いよいよ、曲の練習に入ります。我々日本人に馴染みの深い「わらべ歌」や「古曲」、また「祭囃子」の幾つかを採り上げます。江戸時代やそれ以前にまで遡ることができる「日本の音」に親しみながら、篠笛の音色と指運びを習得しましょう。音曲をより深く味わうことができるように、曲ごとに、その歴史や背景を概説しました。

 明治以降、たくさんの篠笛の教本が出版されてきました。その中には、洋楽や現代曲を扱うものも少なくはありませんが、「篠笛本来の魅力に触れることができない」という理由から、本書では、そのような曲は採用していません。いつの時代であっても親しみを感じることができる日本の曲を通して、篠笛の響きを味わいたいと思います。

 楽譜は誰でも簡単に読むことができる数字譜を用いており、音楽経験のない人でも容易に指運びを理解することができます(逆に楽器経験のないことが素直な篠笛の表現に有利に働くこともあります)。ただし、楽譜は補助的なものです。目で数字を追うよりも、手本となる演奏をよく観察し、別売CDなども活用しながら音をしっかりと聴き込み、「真似る」ことが大切です。

第三章 篠笛を識<し>る 歴史と科学
 ここでは、篠笛をはじめ日本の横笛の歴史と、篠笛の構造や発音の原理、日本の音律(十二律)について学びます。楽器の歴史や理論を知ることで、自信を持って様々な音曲を演奏できるようになるはずです。

 篠笛は、持続音を用いて旋律を奏でることができる楽器です。歌はちょっと苦手という人も、篠笛でなら無理なく音曲を奏でることができます。清らかで透明な響きは、聴き手はもちろん吹き手自身の魂をも心地良く揺らします。篠笛を通して、様々な日本文化に触れる楽しさ、そして、長く尊い歴史を持つ、この篠笛を吹く喜びを、皆さんと共有できれば嬉しく存じます。
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以上です。

篠笛を始めてみよう!と思われた方は、是非、見学・体験などにお越しください。
教室は京都・大阪・東京・福岡にございますm(_ _)m
篠笛教室のご案内
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森田玲『日本の音 篠笛事始め』→詳細

皆様、はじめまして。京都を拠点に活動している篠笛奏者森田玲(もりた・あきら)です。


篠笛は日本に古くから伝わる竹の横笛です


賑やかな祭囃子をはじめ、様々な日本の歌の旋律を奏でることができます。


高音の透明で清らか音色と、ピロピロと鼓膜に響く歯切れの良い指運びの音が魅力です。


このブログでは、篠笛の歴史や文化をはじめ、これから篠笛を始めてみようと思う初心者の皆さんや、経験者の皆さんの悩みにも答えていきたいと思います。


篠笛が話題の中心となるとは思いますが、篠笛だけでは、ネタに限界がありますので、なるべく篠笛と関連させながらも広く横笛一般、さらに篠笛の出自である祭や、日本文化についても触れていきたいと思います。


篠笛の深い味わいを伝えるためには、どうしても難しい話も出てこざるを得ない部分もありますが、なるべく楽しく読んでいただける文章を目指したいと思います。


演奏会や講演会では、時間内に何回お客さんを笑かす(笑わせる)ことができるかが、私の中での当日の出来不出来の指標となっています(笑)。文章で中々そこまで狙うのは難しいですが、頑張ってみます!



「和風」ではなく「真の和」求めて・・・篠笛奏者の真面目な篠笛ブログ
森田玲キャラ

長い歴史の中で育まれてきた篠笛を識る喜びを、
皆さまと一緒に共有できれば嬉しく存じます。

また、皆様にとって有益な情報が一つでもあれば幸いです。


篠笛に関するご質問などございましたら、
info@shinoue.co.jp(@は小文字に変換ください)までご連絡ください。


どうぞ、よろしくお願い申しあげますm(_ _)m


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森田玲(もりた・あきら)略歴
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昭和51年(1976)大阪生まれ、京都在住


玲月流(れいげつりゅう)初代・篠笛奏者

株式会社「篠笛文化研究社」代表取締役
ホームページ → http://www.taminouta.com/


京都を拠点に、日本に古くから伝わる竹の横笛「篠笛(しのぶえ)」の演奏、指導、製作販売、調査研究を行なう。


透明で艶のある音色には定評があり、篠笛の独奏、二重奏、和太鼓との共演を得意とする。


「神賑(かみにぎわい)行事」を切り口とした独特の視点から、篠笛の出自である祭についての研究も行なっている。

Akira Morita, an award-winning Japanese bamboo flute player introduces to the world a symphony of sounds nurtured and performed through the years in Matsuri Bayashi (Japanese Traditional Festival Music). Come and partake on a journey into a world of pure and classical sounds of "Shinobue"


・岸和田高等学校卒業

・京都大学農学部森林科学科卒業


第7回 なにわ大賞 特別賞

第67回 文化庁芸術祭 新人賞

京都市芸術文化 特別奨励者


主著
『日本の音 篠笛事始め』篠笛文化研究社 詳細

『日本の祭と神賑(かみにぎわい)』創元社 詳細


CD
「日本の音 篠笛」篠笛文化研究社
「天地乃笛アメツチノフエー」篠笛文化研究社

篠笛教室 京都・大阪・東京

篠笛の目標

透明で清らかな月の光を音にしたい

座右の銘
文武両道(母校<高校>の教訓)
自学自習(母校<大学>の教訓)
日の本は天の岩戸の昔より女ならでは夜のあけぬ国

好きな飲み物 炭酸水 冷やしあめ 緑茶

好きな食べ物 おにぎり お刺身 鯖寿司

好きなお菓子 わらび餅 チョコレート


勉強時間を確保するため、
二十年間浴びるように飲み続けた日本酒と焼酎を四十歳で完全に卒業。


趣味 しんどくないレベルの走り込み



得意なこと
自分なりの気遣い
普段はあまり乗りませんが、安全運転。
粘り強い


苦手なこと
笑うこと(顔がひきつる)
写真に写ること
暗記


小さい頃の夢 宇宙飛行士 


今の目標 
日本の音楽教育を再考したい
娘・桜を一流の篠笛奏者・笛師に育てる
ストロマトライトの実物を見たい


 笛師で篠笛奏者の森田香織


幸せを感じる瞬間
ガラすきの電車に乗った時

所属学会
生き物文化誌学会(ヒトも含めた生き物同士の関わり合いを考える)
社叢学会(社寺の森について考える)

秘密結社「ドレミがなくても日本は幸せ」発起人


・ プロフィール写真(JPRG)
→ こちら

・ プロフィール(PDF)  こちら

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