篠笛草子 〜 ほのかに聞こゆるもいとをかし 〜

日本に古くから伝わる竹の横笛「篠笛(しのぶえ)」の随筆。篠笛奏者で篠笛文化研究社代表の森田玲が綴ります。
Essey about "Shinobue" transverse bamboo flute in Japan,by Shinobue player Akira Morita.

(株)篠笛文化研究社が運営するブログです。

2017年08月

 5-1  演奏後の手入れの方法を教えてください。

管内にホコリが溜まってくると、笛の響きが悪くなります。目安として三ヶ月に一度、湿らせた綿棒を歌口と指孔から入れて、管内のホコリを取ってください。また、歌口と指孔との間の長い部分(喉)に溜まったホコリが気になるようであれば、目安として半年に一度、水に濡らした柔らかい布(露切り等)を通しても良いでしょう。

篠笛は急激な温湿度の変化(特に乾燥)と物理的な衝撃に弱い楽器です。保管の際や移動時などは、布袋に入れ桐箱などに収納するのが良いでしょう。エアコンの風が直接当たる場所や夏場の車の中などは特に厳禁です。笛は地べたにおかず、面倒でも必ず桐箱などに収納しましょう。予想外のタイミングで、他人、あるいは自分自身が笛を踏み割ってしまう危険性があります。また、笛を何年も吹いていない状態で放置していると割れてしまうことがあります。折りに触れて息を込めることを心がけましょう。
IMGP4444
桐筒の詳細 → こちら

 5-2  笛の保管方法を教えてください。

桐箱、桐箪笥など、温湿度の変化が緩やかな場所に保管しておきましょう。冷暖房の風が当たるところや日光で暖かくなる場所は避けましょう。篠笛は特に乾燥が大敵です。また、何年も吹かずに置いていると、知らない間に割れてしまうことが少なくありません。折に触れて息を吹き込むことを心がけましょう。



 5-3  管内に露が溜まってしまいます。

笛を吹いた後に管尻からしたたり落ちる露は、「水蒸気の結露」である場合と「唾」である場合とがあります。冬場は特に、暖かい息が冷たい笛に触れることによって水蒸気が結露し水滴となって管内に溜まりやすくなります。初心者は唾が出やすいですが、慣れてくると少なくなります。歌口付近に露が溜まると音が出にくくなります、管尻に手拭いなどを当て笛を立てて露を落としてください。応急処置としては全ての指孔をふさいで、息を強めに吹き込むと(音は鳴らさない)、歌口付近の露が移動して音が出やすくなります。周りの物に当たって笛が破損する可能性が高いので、笛を振って露を切ることは厳禁です。


 5-4  露切り(道具)は必要ですか?

管内の露を拭くために「露切り」(布の端に紐と錘を取り付けたもの)がありますが、頻繁に使うことはお奨めできません。管内には微妙な漆の凹凸があることもありますし、なにより、紐の摩擦によって歌口付近の漆を痛めてしまう危険性があります。露切りの使用は数ヶ月に一度にしましょう。


 5-5   管内に水を通して大丈夫でしょうか?

漆器と同じで管内に水を通しても問題ありません。その際、表面から少なからず水が染み込み楽器を痛めることになるので、頻繁な水洗いはお奨めできません。


 5-6   表面を水で洗っても大丈夫でしょうか?

一度や二度水で洗ったくらいで笛が痛むことはありませんが、あまり頻繁に水にさらすと良くないでしょう。また、長期間にわたって吹かれている笛の表面は、手の脂などによって飴色に変色し、良い具合に指が滑りにくくなっています。表面を水で洗った直後は笛が滑りやすいので要注意です。

 6-1  高価な笛の方が良い音が出ますか?

同じような仕様の笛であっても、銘(笛師)のこだわりや考え方、使っている材料、手間の度合いによって値段が異なります。そのため、値段によって笛の善し悪しを判断することはできません。実際に吹き比べてみて、好みの笛を選びましょう。同じ銘(笛師)の笛であっても、(1)材料(竹)の善し悪し (2)内部の塗装の種類の違い(漆かカシューか) (3)装飾の手間(籐巻きの量、表面の漆塗りの有無)などによって、値段が異なります。値段の安い笛であっても、良い音が鳴るものもあります。自身が気に入ったものがあれば、値段にこだわる必要はないでしょう。六本調子・七本調子・八本調子であれば、おおむね2万円から3万円前後の笛が標準で、これは、プロでも使用している笛の価格帯です。次に安いものとしては、1万円前後の笛となります。

◎「京師-みやこ-」の値段表→こちら


 7-1  初心者にお奨めの教材を教えてください。

森田玲『日本の音 篠笛事始め』(篠笛文化研究社)がお奨めです。篠笛の吹き方、数字譜、歴史文化まで総合的に知ることができます。対応のCDも発売されています。その他の奏者が記した教本もございますので、実際に手に取って比較の上、ご検討ください。

◎教本などの詳細は→こちら
5b2fe5fd347e3945ee9a


 8-1  何歳から笛を始めることができますか?

個人差はありますが、七本調子の笛を使った場合、小学校三年生くらいから始めることができます。もちろん、小学生に入る前でも音を鳴らすことができますので、興味を持って遊び感覚で篠笛に親しむ分には何歳であっても歓迎されます。三年生くらいになると、口の形を自分で工夫することができるようになり、指孔もしっかり押さえることができます。


 8-2  漆にかぶれました。

体質によって希に漆にかぶれてしまう人がいます。特に新しい笛の場合は漆が落ち着いていないため、かぶれやすくなっています。科学的根拠は曖昧ですが、笛の管内に米糠(こめぬか)詰めて、笛全体が米糠に埋もれるようにした状態で1,2週間ほど放置して漆を抜くという方法が知られています。いずれにしても、漆の成分を抜くことが肝要です。それでもかぶれてしまう場合にはカシュー塗りの笛への持ち替えを検討しましょう。


 8-3  持っている笛と同じものを特注できますか?

見本の笛があれば、同じ音程・音階の笛を製作することができます。まったく同じ音色を表現することは難しいですが、おおよその音色の傾向を反映させることはできます。装飾を同じくする必要がある場合は、ほかの笛師を紹介させていただくこともございます。



 9-1  篠笛各部の名称


篠笛名称





 9-2  篠笛の種類と対応分野
篠笛グループ

PDF
 →
  こちら




 9-3  篠笛の調子と十二律の対応表
調子






 9-4  三分損益法による日本十二律の算出方法
三分損益





 9-5  篠笛の調子と洋音との比較表
洋音





 9-6  京師・邦楽調(唄用)の音律表
京師




 9-7  運指表

運指表


↑このページのトップヘ