篠笛CDの編集を再開しました。来春の発売を目指します!これまで篠笛教室の皆さんに聴いて頂いていたCD「いろは」は、約20年前、私が篠笛を手に採って七ヶ月で録音したもの。現在でもその音色を継承していますが、音運びや選曲の基準が現在とは若干異なります。私の理想とする篠笛の音色や音運び、篠笛に適した音曲を伝えるために新たにCDを製作せねば、と思いながら何年も経ってしまいましたm(_ _)m

新作のCDの製作に踏み切れなかった一番の理由は、録音環境の問題です。私は、篠笛人生約20年において一度もマイクを使っていません(特殊な企画で2度だけ主催者側の依頼で補助的に設置したことはあります)。私の目指す、篠笛の透明で清らかな音色と、篠笛の魅力である指打ち音がマイクを通すと伝わらないというのが、その理由です。

通常、CDを製作する場合、残響のないスタジオで収録し、音の響きや延び具合は機械的なエフェクト処理で表現することが考えられますが、これでは、純粋な篠笛の響きとは似ても似つかないものになってしまいます。何より、そのような環境では、私自身が良い笛の音を練ることができません。

それでは、演奏会などを行なう会場での録音が良いかというと、残念ながらそうではありません。そこで収録した音は空間の広がりも捉えてしまうので、音像が遠すぎてぼやけてしまいます。

このように、録音場所に悩みながら月日が経っていまいましたが、昨年、ようやく理想の会場が見つかりました。

弊社(篠笛文化研究社)の岸和田店の通り庭です(現在は場所を移転)。京都の町家のような間口が狭く奥に広い、いわゆる「ウナギの寝床」様式で、土間から奥庭まで通路が延びており、天井は二階まで吹き抜けています。

いつまでもCDを作らないという訳にはいかないので、ある日、えいやぁー!と、ここで録音したところ、思いの外、良い感じの音を捉えることができました。

篠笛の音が、遠すぎず、近すぎず、何より、鼓膜に響く指打ち音をしっかりと捉えており、スピーカーの前で聴くと、その響が鼓膜に触れます。そして、スピーカーから離れて、例えば、隣の部屋で聴くと、実際に篠笛の遠音のように音色が変化して聞こえます。

あまり音像が近すぎると、聴いていてしんどくなるので、ほど良いリアル感を再現するために、マイクの位置の設定には苦労しました。

このようにして、昨年の夏と秋に二十数曲を収録。とても静かな環境だったのですが、関空に近いこともあり、飛行機の音と最後の一音が被ってしまうことも・・・

各曲、収録時に納得した5曲ほどに絞り込み、昨日、香織さんと一緒に、最終音源を決定しました。

今回は、篠笛を持ち替えず、一種類の篠笛で、どこまで表現できるかということに挑戦したく、七本調子邦楽調(唄用)ですべての曲を吹き切っています。また、篠笛の二重奏の魅力も伝えたく、さらに、屋外での篠笛の響きも収録したく、いつもお世話になっている京都の雲龍院さんでの録音も最後に入れています。私の篠笛の魅力は、太鼓との共演時に発揮されますが(←個人の感想)、今回は篠笛のみで勝負。

すべて日本の曲、エフェクト処理なし、無添加・天然音の篠笛CDです。

乞うご期待!


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(写真・フォーシーズンズホテル京都 積翠亭)
・東雲(森田玲 作曲) ・凧々あがれ (わらべ歌) ・鬼さんこちら (わらべ歌) ・蛍(わらべ歌) ・かごめ  (わらべ歌) ・あんたがたどこさ (わらべ歌) ・祇園祭 粽売りの歌 (わらべ歌) ・兎(わらべ歌) ・姫松(日本古歌) ・江戸の子守歌(子守歌) ・天満の市(子守歌) ・通りゃんせ (わらべ歌) ・四方の景色 (わらべ歌) ・桜(日本古歌・箏曲) ・越殿楽(雅楽) ・並足の笛~きざみの笛(岸和田祭地車囃子) ・秋の音(森田玲 作曲) ・馬鹿囃子(伊勢大神楽・獅子舞囃子) ・篠楽(森田玲 作曲) ・伊勢音頭 道中歌(日本古歌)
・月(森田玲 作曲)
・秋の音~二重奏
(森田玲 作曲)