玲月流 日本十二律調音篠笛「京師-みやこ-」邦楽調(唄用)の調律の標準値の表を作成しました。
京師(邦楽調・唄用)の調律
基本的には良い音が鳴っていれば何でも良いのですが、製作の段階では、この表にある振動数を基準としています。


他の和楽器、あるいは他国の楽器との対応を考える時にご活用ください。

PDF → http://shinobue.blog.jp/shinobue-ritsu.pdf

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・日本の音は「壱越」基準として「三分損益法」で算出します。「壱越」の音程は時代によって異なります。

・「京師」は、明治中期にイギリス人の音楽学者、エリス(Alexander John Ellis)が測定した「音叉」の数値:「壱越」=292.7 Hzを基準に「三分損益法」のにより算出た数値を各指孔に割り当てています。

この「音叉」は、雅楽の専門の楽人が調定した「日本音楽十二律ヲ示スヘキ調音叉」で、明治十八年(一八八五)「ロンドン万国発明品博覧会」に出品され、現在は東京藝術大学に所蔵されています。

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表の数値は、おおよその目安です。各指孔の音程には幅を持たせています。これは、十二律の音程にとらわれすぎると、自然な指運びが困難な位置に孔を配したり、極端に小さな指孔(音色が損なわれる)を開けたりすることになるからです。奏者の息遣いによっても音程は大幅に上下します。

「京師」の製作にあたっては、「響きの良い透明な音」と「自然な指運び」、「ピロピロと鼓膜に響く指打ち音」の実現を第一に考えます。篠笛は楽器だけではなく、奏者の息遣いや指使いの工夫をともなって「音色・音量・音程」を練り出す「半作音楽器」です。音を作る過程で醸し出される「篠笛の味」「篠笛らしさ」「篠笛の趣」を大切にしましょう。

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現在、日本音楽の調子笛は、「黄鐘」をAとして、A=430 Hzとして、Aの音から「三分損益法」で各音を算出することが多いようですが、A=430 Hzという数値に歴史的な意義はありません。戦後、Cを「2の累乗」で定める「物理科学ピッチ philosophical(scientific)pitch」<18世紀にフランスの数学者、ソヴール(Joseph Sauveur)が提唱>のC4 (2の8乗= 256 Hz)から平均律のA4≒430.54 Hzを求め、その小数点以下を切り捨てて430 Hzとしたものと推測されます。

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近年、西洋の12平均律を目指した「ドレミの笛(洋楽調)」を「唄用」「歌物用」と呼ぶ事例が散見されます。「唄用(邦楽調)の篠笛」と「ドレミの笛」とでは、その来歴や設計思想が異なりますので、ご注意ください。

篠笛文化研究社・玲月流では、雅楽の笛の音階に準じる「古典調」の笛と名称の次元を揃えるために、「唄用」を「邦楽調」と呼んでいます。
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詳細は森田玲『日本の音 篠笛事始め』(篠笛文化研究社)を参照ください。m(_ _)m