この秋は博物館での祭に関する講演会や大学の講義が続きました。

篠笛と祭は切っても切り離せません。

舞台の篠笛や歌舞伎囃子の世界から篠笛を始めた若い人たちの中には、もしかしたら「篠笛奏者がなぜ祭の話を??」と疑問に感じる方もいらっしゃるかもしれません。

私の場合は、祭の篠笛が入り口でしたので、当初は逆に、歌舞伎囃子の篠笛や、舞台での篠笛演奏会の存在に驚きました。

篠笛との出会いや関わり方は人によって様々かと思いますが、篠笛が最も活き活きと奏される祭の現場は知っておきたいところ。篠笛の音色や奏法は、各地の祭の中で育まれてきました。

篠笛を吹いたり教えたり作ったりする立場に居るためには、篠笛の出自である祭に関する見識を深め、篠笛の歴史の文脈上に自分の篠笛の在り方を見出す必要があると考えています。篠笛奏者になるために試験があるわけではないので、誰でも篠笛奏者になることができるのですが、私は、日々、自問自答の毎日で苦悩しております(笑)。

一口に祭といっても、地域や時代によって様々です。その多様性の中で迷わないために、時代や地域を越えて確かな羅針盤となるのが「神賑(かみにぎわい)」というキーワードです。


2015年には『日本の祭と神賑』創元社を出版し、祭を「神事」と「神賑(かみにぎわい)行事」に分けてとらえる方法を提示しました。この二つの局面を拠り所に祭を見つめ直すと、あたかも二次元の絵が三次元の立体となるように、祭の実像がありありと立ち現れてきます。

書籍の詳細 →http://shinobue.blog.jp/archives/3263983.html


このような祭の基本構造に関する話は、祭をテーマとした講演会だけではなく、篠笛の演奏会でも話をすることが多く、嬉しいことに、予想に反して皆さんに興味を持っていただいております。


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(森田玲『日本の祭と神賑』創元社より)

「神賑(かみにぎわい)行事」を理解するため、以下に概略を述べてみます。

・「祭」には「神事」と「神賑行事」という二つの局面がある。

・我々が普段「祭」と認識し、テレビや雑誌などでよく目にする場面は「神賑行事」の部分である。

・「神事」と「神賑行事」の違いは、人々の意識の方向性によって分けることができる。

・ヒトの意識がカミに向いている場面が「神事」、ヒトの意識が氏子同士あるいは見物人といったヒトに向いている場面が「神賑行事」

・「神事」は厳粛に行なわれることが多く、「神賑行事」は老若男女総出の乱痴気騒ぎになる傾向がある。

・本殿の奥でカミとヒトとの橋渡し役である神職と氏子・崇敬者の代表など限られた者のみが参列して行なわれる「例祭式」は「神事」である。

・カミが神輿など乗って移動する「神幸祭」は「神事」である。

・「神輿」は、時に神賑的な華やかさをともなって舁かれることがあるが、ヒトの意識がカミに向いている場面であるから「神事」に含まれる。

ざっと箇条書きにするとこんな感じです。

これを踏まえて、祭の中の横笛について考えてみます。

例えば、同じ横笛をともなう歌舞音曲でも、
次の図では、社殿に鎮まるカミ様に向かって行なわれているので、神事の歌舞音曲、すなわち「神楽(かぐら)」となります。
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次の図では、アメウズメノミコト(おかめ)に扮して神楽鈴を採った巫女風の人物が舞っているので、神楽っぽい雰囲気ではありますが、見物人などに披露するための芸能ですので、この芸能は「神賑行事」の中の歌舞音曲ということになります。
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そして、篠笛はもっぱら「祭」の中の「神賑行事」の中で育まれてきました。

詳しくは機会を改めますが、日本の横笛の種類と役割の概要は以下の通りです。

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森田玲『日本の音 篠笛事始め』篠笛文化研究社より

最後に少し補足です。

例えば、祭の中で、ある音曲を篠笛で吹く場合に、先ほど述べたように、神社や神輿に鎮まるカミ様に奉る歌舞音曲(神楽)の中で吹かれる場合は「神事の中の篠笛」となり、まったく同じ種類の音曲を奏でる場合であっても、氏子一般や見物人に対する歌舞音曲に伴って吹く場合には「神賑行事の篠笛」ということになります。

そして、ある祭では「神事」で用いられている音曲が、他の祭では「神賑行事」で用いられるということもあり得ます。

少し話が込み入ってきました・・・・

いずれにしましても、自分が演奏している楽器についてよく知ることは素直に楽しいことですし、また、篠笛の音色にも深みが増してくると思います。

これまで祭の篠笛に注目していなかった方は、是非、祭の音風景にも目を向けて(耳を傾けて)みてください!