読売新聞さんから『関西よみうり懇話会』vol.5をお届け頂きました。
昨年7月掲載の「論~祭りのこれから」を収録いただいておりますm(_ _)m
よみうり懇話会(小)

関西よみうり懇話会「論~祭りのこれから」

<祈りの形 守り続けて> 森田玲 篠笛奏者(聞き手・木須井麻子)
『関西よみうり懇話会』Vol.5(2018年)

僕にとって祭りの原風景はだんじりです。大阪府岸和田市や周辺の町では、秋の祭りで唐破風屋根に車輪のついただんじりが曳行されます。母の実家がある岸和田市で中学2年まで、だんじりの曳き手を経験したのです。

にぎやかなお囃子、提灯の明かり。五感に響く非日常の出来事でした。大人とおそろいの法被を着ると、地域社会の一員だと感じました。

変化に気づいたのは約20年前、大学時代です。お囃子の篠笛の音がどうも前ほど響かない。理由を調べると、元は1.2センチほどだった笛の内径が2割細くなっていた。吹きやすいけど音の小さい笛がはやっていたのです。

曳き手を鼓舞する伝統のお囃子を取り戻したくて、本来の笛を扱う楽器店を開き、自分でも演奏を始めました。理解してくれる人が少しずつ増え、最近、かつての響きが戻ってきています。

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祭りは日本、そして地域の文化が凝縮され、共同体の核でもあります。江戸時代、岸和田城下の祭りを通して定着しただんじりも、地域の気風を色濃く伝えています。貴重な文化遺産を、後世に継承していかねばなりません。

今後を考えるうえで、他の地域の祭を知ることも大切でしょう。僕は10年かけて東北から九州まで約120の祭りを見て歩きました。
魔をはらう獅子舞を家々で演じる伊勢大神楽は、三重を拠点に近畿や中国地方も巡ります。伊勢参りに代わる場だったようです。広島の「壬生の花田植」は、菅笠に絣(かすり)着物姿の女性が囃子に合わせて田植えをします。豊作の祈りが娯楽にもなっていました。

どの祭りも、その地で代々暮らしを営んできた人々の心と風土を映しています。

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伝統ある祭りに共通する構造があります。神事と神賑(かみにぎわい)によって成り立っていることです。神事は神に祈りをささげる儀式、神賑は神を意識しながら人々が交歓する行事、だんじりの曳行は神賑です。

近年、神賑が土日に変更される傾向がみられます。神事との分離が進むと単なるイベントになりかねません。培われてきた祈りの形を見失わずに続けていきたいですね。

2017年7月21日 読売新聞に掲載分