篠笛草子 〜 ほのかに聞こゆるもいとをかし 〜

日本に古くから伝わる竹の横笛「篠笛(しのぶえ)」の随筆。篠笛奏者で篠笛文化研究社代表の森田玲が綴ります。
Essey about "Shinobue" transverse bamboo flute in Japan,by Shinobue player Akira Morita.

(株)篠笛文化研究社が運営するブログです。

カテゴリ: 「篠笛」の歴史・文化

新年の挨拶、何か文字だけでは味気ないなぁ~とブツブツ言っていたら香織さんがササッと描いてくれました!

2019書き初め兎

兎が目立ちますが、うちのマスコットが偶然十二支の中に紛れこんでおりますのでお許しくださいm(_ _)m

以下、本文です。



あけましておめでとうございます。

昨年は、本拠を三条大橋から京都御所の北へと移し、多くの皆様に、篠笛そして祭に関して様々なお願いとご相談をさせて頂いた一年となりました。無謀にも近い話も幾つかございましたが、その意義を汲み取って頂くことができ、快諾、そして、良い助言をたくさん賜ることができました。

特に祭の社会的意義における「神事」と「神賑行事」の関係性について新たな知見を得たこと、そして「邦楽調(唄用)の篠笛」と「洋楽調(ドレミ)の笛」の違いを、何人かの篠笛奏者の皆様、楽器店の皆様にご理解いただくことができたことは、大きな成果でした。

今年も忙しい一年になりそうですが、高いモチベーションを保つことができるのは、同じ志を持つ仲間の活躍、篠笛の門下生の皆さんの笑顔、演奏会・講演会に足を運んでくださる皆様の存在があるからこそです。

皆様への感謝の気持ちを忘れずに、今年も「祭」「篠笛」を切り口に、日本文化のため、そして未来の若者たち、子供たちのために、責任感と緊張感、そしてスピード感をもって、仕事を進めて参りたいと存じます。

本年もどうぞよろしくお願い申しあげます。

篠笛文化研究社 代表
玲月流初代 篠笛奏者
森田玲

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以下、岸和田店のご挨拶です。
2019書き初め兎kisiwada
あけましておめでとうございます。

今年は昨年以上に「岸極ーきしのきわみー」の在庫数を充実させて参りたいと思っております。また、ご好評いただきました、飾り房の番号による特注も継続いたします。

1月6日(日)10時からの営業となります。

本年もよろしくお願い申しあげます。

民の謡(篠笛文化研究社・岸和田店)代表
森田玲

現在、必要に迫られて「日本音楽」の勉強にターボをかけていますが、ほとんどの本が「ドレミ・五線譜」を用いて解説されているので苦労しています。「五線譜」を読めなくても篠笛は吹けますし、和楽器を演奏することができますが、現行では「五線譜」を読めないと「日本音楽」を勉強する(研究の蓄積を読み解く)ことは不可能に近いです。

それならば「五線譜」を読めるようになれば良い、慣れてしまえば良いのですが、「なんで日本音楽の勉強でドレミやねん!」という精神的な抵抗と、以下に述べるような実際的なリスクのため、今のところ、それを拒んでいます。

「英語」を修得するように「五線譜」もコミュニケーションのツールとして修得すれば良いのでは、と思われるかもしれませんが、中々そうはいきません。

「英語」と「日本語」はまったく異なるモノですから、例えば「英語」をある程度話せるようになったからといって「日本語」の「りんご」を「あっぷりんご」、「にほん」を「にゃぽん」などと口走ることはありません(多分)。

ところが「五線譜・ドレミ」をマスターすると、これに近い現象がおきてしまいます。

なぜならば「日本十二律」も「西洋12平均律」も1オクターブを12に分けるものですので、僕みたいな音痴には良い意味でも悪い意味でも同じように認識されてしまうほど、互いに大枠では似ているものだからです。

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図・拙著『日本の音 篠笛事始め』

喩えるなら、大阪弁バリバリの人間が東京で数年暮らすと標準語の洗礼を受けて、謎の気色悪いエセ関西弁になって帰ってくる、これと同じような現象が起きないか心配なのです。

知り合いのアナウンサーの方、大阪出身なのですが、日頃の会話では、もはや何弁かわかならないイントネーションとなっています(もちろんテレビでは完璧な標準語!)。

つまり、標準語的なドレミを習得する事が、少なからず方言的な日本の音に影響を及ぼしかねないのでは、という恐怖があるのです。

また、僕の周りにも多いのですが、いわゆる「耳の良い」人ほど、いったん「ドレミ・モード」を修得してしまうと、演奏をする時、聞いた時、頭の中で「ド・レ・ミの声」が流れてしまいます。これは拭いたくても拭えないノイズの発生です。香織さんもこのパターン。

このようなリスクを考えると、現行の「日本音楽」の本を読み解くために「五線譜・ドレミ」は必要なのですが、それを修得することに大きな躊躇が生まれるのです。

どないしょ…

2月24日は伊勢国・桑名は太夫村の増田神社へ!もう20年近く参っております伊勢大神楽の総舞。玲月流篠笛の原点の一つでもあります。生徒さん他10名ほどと合流の予定のため、荒削りですが資料を作成しました!
伊勢大神楽ツアー
PDF→こちら

毎年は前日から入るのですが、今年は予定変更で明日現地で宿泊です。

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早朝、近鉄特急に飛び乗りました!本日12月24日は「お獅子の日」桜は生まれて3ヶ月で参っております。あっという間に5才です。寒さ対策万全!

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12時半より伊勢大神楽の総舞が始まりました!清らかな笛の音が境内に響きわたり「鈴の舞」「四方の舞」「跳びの舞」「扇の舞」と続きます^_^


古代の散楽の流れをくむ放下(ほうか)の曲芸の一つ「献灯の曲」。祇園囃子から馬鹿囃子へ音曲が変わります。山本勘太夫組に入って三年目の若手が披露。三年でここまでとは凄い!


数ある演目の中でも最も尊ばれる「神来舞(しぐるま)」!美しい一人立ちの採物舞から二人立ちの聖獣への変化をご覧ください^_^


放下(ほうか)の曲芸の中で僕が最も好きな篠笛の音曲です^_^ 「剣三番叟」!

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終局はお獅子の花魁道中「魁曲(らんぎょく)」!お客さんも一体となってヤートコセーの伊勢音頭を唱和^_^

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最後は桜の獅子噛み^_^ 0才の時は熟睡で、1才では意味不明状態、3才で大泣き、5才の今ではお獅子はお友だちデス!伊勢大神楽講社の皆さま、山本勘太夫組の皆さま、ありがとうございましたm(_ _)m

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そして夕方からは毎年恒例の前田憲司さんとの祭・芸能談義の総決算!毎年23日ですが今年は24日となりました。この日は何故かどの店もがら空きで貸切状態でした。今年も楽しく意義のある会となりました!

篠笛を生業としてかれこれ二十年が経ちました。その頃から篠笛奏者として活躍されている方はいらっしゃいましたが、YouTubeが登場して以降でしょうか、篠笛奏者、篠笛愛好家の方の人数が一気に増えたように感じます。

その中で、どうしても気になることが一つございます。「唄用」の篠笛の名称について。

僕は「古典調」と「唄用」の篠笛を吹いているのですが、最近は「唄用」を吹いていると言うと「ドレミの笛」を吹いていると誤解されていることが少なくないことに気づきました。

20年前には想像もしなかったことですが、今では「唄用」は「ドレミの笛」と思っている人が大半です(詳しくは後述しますが「唄用」は日本音階の笛)。

どこでボタンを掛け違えたのかわかりませんが、多くの篠笛奏者の方は、「唄用」=「ドレミの笛」という認識で、楽器店や太鼓店でもそのような表記が一般的です。

ほとんど手遅れ状態ではありますが・・・このままでは「唄用」の名称が「ドレミの笛」に取って変わられてしまいます。

もしこのような状況が、ドレミの笛を演奏する皆さんも意図するものでないとすれば、古典的な笛を吹く奏者にとっても、現代的な笛を吹く奏者にとっても、何より篠笛の歴史にとって、とても不幸なことです。

どのような笛でどのような曲を吹くにしても、その楽器の基本は共有しておきたい。そのような想いで、今一度、篠笛の種類・名称について整理しておきたいと思います。

調律の概念について
その前に一点。「調律」という概念について。「調律」と聞くと、ほとんどの方はピアノの調律のように「西洋の12平均律」に基づいた「調律」を思い浮かべると思いますが、日本にも「日本十二律」に基づいた「調律」があります。また、世界を見渡すと、その国、その地域に根付いた様々な「調律」が存在します。つまり「調律笛」=「ドレミの笛」とは限らないということをまずは押さえておきたいと思います。

日本各地に多様な篠笛がありますが、下図(PDF)のように、おおよそ ①「均等孔」、②「古典調」、③「邦楽調(唄用)」の三種類に大別すると理解しやすいかと思います。

2019.01.10に分類案の一部を変更しました。
篠笛グループ

PDF
  こちら


① 均等孔
「均等孔の篠笛」は、指孔の間隔を均等にあけたもので、祭囃子など地域の人が手作りする際によくみられる篠笛です。この笛は「調律」されているわけではありませんが、この笛を吹く人、聞く人は、そこから紡ぎ出される旋律を自然に受け入れ、愛していますので、「調律されていない」からといって「調律笛」よりも劣っているという訳ではありません。自然な指運びが可能で、とてもよく響く笛です。

② 古典調
「古典調の篠笛」は、祭囃子でよく用いられる笛です。「囃子用」などと呼ばれることもあり、「調律」されていない「均等孔の篠笛」と混同されることが少なくありませんが、指孔の間隔をよく観察してみると、管尻に向かうに従ってその間隔が狭くなっていることに気付きます。これは、何らかの「調律」がなされている証です。現在では「古典調の篠笛」を製作する際、「見本の笛」の指孔の位置を写して作ることが大半です。その場合は、厳密には「調律」されてはいないことになりますが、元々は「日本十二律」に基づく「雅楽」の「龍笛」「高麗笛」「神楽笛」の音階を真似たであろうと推測される指孔の配置となっています。つまり「古典調の篠笛」は「雅楽の横笛」の音階に準じた笛と言えるでしょう。大きな音で華やかな指打ち音が魅力です。

③ 邦楽調(唄用)
「邦楽調(唄用)の篠笛」は、歌舞伎の中の三味線音楽と合わせやすいように「日本十二律」に基づいて調律された篠笛です。「古典調」も「唄用」も、「日本十二律」に基づく「調律」ですが、それぞれの指孔にどの音を対応させるのかによって笛の種類が異なってきます。この笛は、昭和初期に歌舞伎囃子の五世福原百之助氏が考案、実子の六世福原百之助氏が完成させたもので、当初は「新案篠笛」と呼んでいましたが、後に「唄用篠笛」の名称が広がりました。「長唄をはじめ日本の歌を吹くのに適した篠笛」という解釈で良いでしょう。

「古典調」と「唄用」という言葉を並べた時、前者が「調律方法」、後者が「用途」を表しているため、言葉の次元が異なり混乱が生じやすい嫌いがあります。そのため、篠笛文化研究社では「唄用」を「邦楽調(唄用)」と表現するようにしています。「邦楽」は三味線音楽をはじめとした近世邦楽を意味します。


調律の加減について
「古典調」も「邦楽調」も「調律笛」ですが、あえて「調律」を曖昧にしておくことが肝要です。各指孔に対して割り当てる音を厳密にし過ぎると、自然な指で押さえることができない位置に指孔を配置することになり、また、指孔の大小が極端になってしまいます。これでは、篠笛の魅力である「華やかな指打ち音」の表現が難しくなります。

「調律」が曖昧だからといって、求める音程を出すことができないという訳ではありません。篠笛は「奏者」と「楽器」の双方で、求める「音程・音色・音量」を表現する「半作音楽器」です。ストライクゾーンを広くとっておいて(「あそび」を持たせて)、「息遣い」と「指使い」の工夫で狙った音を出す。これによって、豊かな響きを生み出すことができるのです。

(この曖昧さのため、本来的ではありませんが「邦楽調(唄用)の篠笛」でも「西洋12平均律」を出すことも可能となります)

洋楽調(ドレミ)
「洋楽調(ドレミの笛)」は、「西洋12平均律」に基づいて調律されたものです。この笛が近年「歌物」「唄用」と間違った名称で呼ばれています。その最大の理由は、「ドレミの笛」と「邦楽調(唄用)の篠笛」の指孔の大小の雰囲気が似ているためでしょう。

これは、唄用(邦楽調)の笛を「不完全な調律」と間違って解釈し、「西洋12平均律の笛」を作るにあたって、「邦楽調(唄用)の篠笛」の指孔をヒントとして「洋楽調(ドレミの笛)」を作ったことに拠ります。

それでは、なぜ「異なる調律」ではなく「不完全な調律」と考えられたのでしょうか。それは、まず、そもそも「西洋12平均律」以外の音律を、多くの篠笛奏者や笛師が知らなかったことが考えられます。知っていれば、もしかしたら、ドレミに走らなかったかもしれません。

そして「西洋12平均律」も「日本十二律」も「1オクターブを12の音に分ける」という点では同じなので、大枠では同じような音の並びになることも大きな落とし穴となります。

例えば「唄用(邦楽調)」をチューナー(12平均律)で計測した際、「微妙に合っているが微妙に異なる」という何とも悩ましい結果となります。ここで「日本十二律」の存在を知らず「西洋12平均律」が「科学的な絶対基準」となってしまっていると、日本の笛は「異なる調律」ではなく「不完全な調律」という結論に達してしまう可能性が少なくありません。

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2019.01.10追記

ここまで「洋楽調(ドレミ)」は、現在「篠笛」として扱ってきましたが、「外国の曲を演奏するために外国の調律の位置に孔をあけた横笛」を「篠笛」とは言えないのではないか、という議論が出てきました。
 例えば、インド音楽に合う位置に孔をあけた竹の横笛は「印楽調篠笛」とはならず、インドの民俗楽器である竹製横笛・バンスリそのものとなります。その他、世界各地に竹の横笛は存在し、12平均律の横笛だけを「篠笛」の範疇に入れるという例外を設けることは難しいのではないでしょうか。「洋楽調(ドレミ)」は、むしろ、竹製フルートと 呼んだ方が現実に近と思われます。

とは言え、篠笛の要素(装飾・漆塗り等)を残したいという製作者・奏者の気持ちが体現されている部分もあるので、今の段階では「洋楽調(ドレミ)」を「篠笛風洋楽調横笛」と呼ぶことにします。
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以上、篠笛の種類の概要を記してみました。「日本十二律」についての詳細や、各篠笛の来歴についての詳細は、拙著『日本の音 篠笛事始め』をご参照ください。


はじめての人には少しややこし部分もあったかもしれませんが、

(1)「邦楽調(唄用)」から「ドレミの笛」が進化的に生まれたのではなく、両者の「調律」の概念はまったく異なること(「日本十二律」と「西洋12平均律」)。

(2)「洋楽調(ドレミの笛)」が生まれる以前から「邦楽調(唄用)」の笛が存在してること。そのため、「洋楽調子(ドレミの笛)」を「唄用・歌物」と呼ぶことは適切でないこと(「歌物」は日本音楽で古くから使われてる言葉)。

この2点を押さえておいていただければ幸いです。

篠笛を用いた様々なアート表現はあって良いと思いますし、そこから篠笛の新たな可能性や、原点回帰へのきっかけも生まれるかもしれません。

ただ、現在、そのほとんどが「洋楽調(ドレミの笛)」を用いたものということが少し残念です。せっかく日本の楽器で日本的なものを表現しようとするのですから、現代曲を吹奏する際や、新たに作曲する際にも、より日本的な「古典調」や「邦楽調(唄用)」が用いられる機会が増えれば嬉しいです。

明治維新150年。思い起こせば、当時、学校教育に西洋音楽を採り入れたのは、外国からの圧力ではなく、「文明」と「文化」の扱い方を取り違えてしまった日本人自身でした。

平成十四年から、少しですが、ようやく学校の音楽の授業に和楽器が採り入れられ始めました。祭と学校教育の現場にだけには「洋楽調(ドレミの笛)」は入らないようにしなければとは思っています。

様々な表現をするにしても、その土台の部分は共有しておきたい。それによって初めて、篠笛が、過去・現在・未来へと繋がっていく世界の中の民族楽器として、日本人にとって不可欠の民俗楽器としてのポジションを保ち続けることができるのではないか、篠笛という先人たちが育んできた文化遺産を、未来の子供たちにバトンタッチするためには、折に触れて、歴史を参照しなければならないのではないか、そんな想いで篠笛を吹いています。
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今回は、篠笛奏者の佐藤和哉さんとの出会いの中で、「唄用の篠笛」と「ドレミの笛」の話で盛り上がり、それを受けてのブログ記事となりました。いつもとは異なる文体のため、文章を書くのに二倍の時間がかかりました(笑)。

相方、太鼓奏者の植木陽史くんとの「笛と太鼓の交換日記」
遂に始まってしまいました。

https://www.facebook.com/shinobue.taiko/

僕は祭囃子を聞いて育ったので、生まれた時から、もとい、母のお腹にいる時から、笛と太鼓はセットでした。

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森田玲(4才)左

来年の2月24日には「笛と太鼓は恋人」というイベントも考えております。

いつも笛を吹いている人は太鼓を打ってみる。

いつも太鼓を打っている人は笛を吹いてみる。

そんな会を考えています。

今まで以上に太鼓を意識して日記を書くこと。
これによって新たな発見もあるかもと期待しています。

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青少年時代の植木陽史

男同士の日交換日記。
多少、いや、多分に抵抗があるかもしれませんが、

お時間ございましたらサラッとお読みいただければと存じます。

よろしければ「笛と太鼓は恋人」のページに「いいね」を頂ければ幸いです

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