篠笛草子 〜 ほのかに聞こゆるもいとをかし 〜

日本に古くから伝わる竹の横笛「篠笛(しのぶえ)」の随筆。篠笛奏者で篠笛文化研究社代表の森田玲が綴ります。
Essey about "Shinobue" transverse bamboo flute in Japan,by Shinobue player Akira Morita.

(株)篠笛文化研究社が運営するブログです。

カテゴリ: 「篠笛」の歴史・文化

お盆を過ぎてから1日に何度も「はい!民の謡(たみのうた)です!」と旧社名を声に出しています。

現在の社名は「篠笛文化研究社」。篠笛については未だ未だ勉強中で、名前負けしそうな社名ですが、これは、ドレミの笛の皆さんが集まって作った団体名が、日本を代表する篠笛の協会のような名前だったので、その対応策としての苦肉の策でした。

社名を変更すると決めた時、多くの方から勿体無いとのお声を頂き、岸和田店の名称として残すことにしました。「民の謡(たみのうた)」は私の造語で「民俗音楽」を大和言葉で表したものです。

日頃「民の謡」の名前は滅多に声に出さなくなりましたが、この時期は岸和田からの問い合わせも多く、社内で「民の謡」が飛び交います。

20年使って来た屋号でしたので、やはり何か安心する響きです^_^

かつてはよく手紙の宛名が「民の歌」「民の唄」「民の詩」あるいは「民の宴」など間違えられました。

一度アゴが外れそうになったのは、某公共団体からの手紙で「尻の謡」(-。-; これはアウトです…

最近は「篠笛文化研究〈所〉」というミスが多いです。「研究所」などと大層な名前は絶対付けません…。というか、宛名に書かれているということは、書いた本人はそう思っているということでしょう…これは困りました。

電話がかかって来た時、「篠笛文化研究社」「民の謡」のどちらで答えるか、ということが問題になってきますが、不思議なことに、相手の声の雰囲気を聞いた瞬間に、僕も香織さんもダンジリ関係か篠笛一般の問い合わせか判ってしまいます^_^

「民の謡」「篠笛文化研究社」、ローカルとグローバル、今後もグローカルに活動を展開して参りたいと思います。

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写真は昨年の7月。岸和田店移転の際に下ろした看板。伊勢大神楽・山本勘太夫さんと^_^

NHKにっぽんの芸能「多彩なる笛の世界」実家で録画してもらっていたものを確認。筆舌に尽くしがたい最悪の内容でした・・・(個々には良い演奏もありましたが)。随所にドレミの話が挿入され、雅楽の笛の実演の倍以上の時間、能の笛方の人が口に何本もの笛を加えて謎の曲を演奏するという珍芸・・・これには、呆れるというより笑い転げてしまいました。
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私が最も注目していたのは篠笛がどのように紹介されるか・・・その中で懸念事項が現実のものになりました。放送事故レベルの内容です。

「ドレミの笛」がテロップ入りで「唄用の篠笛」と紹介されています。私は何度も指摘しておりますが、「唄用の篠笛」は現行の「ドレミの笛」の登場以前から存在する、主として近世邦楽のための調律笛、すなわち「日本の音階の篠笛」です。

番組の表記に従えば、「唄用」の篠笛を演奏しまくっている私は「ドレミの笛」を演奏していることになります。もしかしたら、そのような誤解を既にに受けている可能性があります・・・何と恐ろしいことでしょう。

隣に三味線音楽の方も座っていらっしゃたのに、何故、指摘しなかったのでしょう。生放送でないので可能なはず。「唄用」の笛は三味線音楽の中から出てきた仕様の篠笛なのに、悔やまれます。

現在、篠笛はおおよそ以下の三種類に大別することができます。

・古典調の篠笛(雅楽の音階に準じる)
・均等孔の篠笛
・邦楽調(唄用)の篠笛(近世邦楽との親和性が高い)

「ドレミの笛」は、西洋の12平均律を目指して竹に孔をあけたもので、孔の位置もいびつで、指が届きにくく、私は、「ドレミの笛」は篠笛の範疇ではなく、「日本人が作ったなんちゃって西洋楽器」と捉えた方が良いと思っています。

この10年くらでしょうか、「ドレミの笛」の奏者や楽器店などで「ドレミの笛」のことを「唄用」と表記するようになっています。現在、90%以上の方は「ドレミ=唄用」と思っているのではないでしょうか?現に、私の篠笛教室に初めて来られる方で、「唄用=ドレミ」と思っていましたという方が少なくありません。

番組中、「ドレミの笛」と「明笛(清笛)」を吹き比べて紹介する場面がありました。「明笛」の音を吹いて後、「ドレミの笛(番組では唄用の笛と誤表記)」をドレミファソラシド♪と吹いてみて、司会者の方が「(ドレミの音階を聴くと)安心しますね!」という始末・・「にっぽんの芸能」の番組らしからぬ発言です。

ちなみに、ここで吹かれた「明笛(清笛)」は、歌口と指孔との間にもう一つ響孔があいていて、そこに黒竹の内側から採った竹の薄皮を竹紙(ちくし)を舌で湿らせて響孔に貼り付けて演奏します。本来は、「ビィー」という独特の魅力的な音をともなって旋律を奏でることができます。ところが、番組中では、響孔を完全にふさいでおり、まったく「明笛」の音が出ていません。「唐津くんち」の祭囃子を吹いていましたが、私が現地で聞いた祭囃子とはまったく異なる雰囲気に感じました。

これでは、「明笛」は、単に「ドレミの笛」を引き立てるためだけに用いられたことになります。

とにかく、和楽器を紹介する時に、いちいちドレミを出してくるのはいかがなものか?番組中、篠笛に限らず、ドレミ基準で話が進むことに違和感を感じました。これは、日本語をローマ字表記し、そこからまた日本語に直すようなもので、まったく意味が無いばかりか、オリジナルの情報が劣化していしまいます。

ドレミの笛の拡大の温床は、ドレミの笛の奏者、和太鼓グループ、阿波踊り…

ドレミの笛の演奏の是非はさておき、既存の唄用という名称がドレミの笛の奏者によって奪い取られることだけは絶対に避けねばなりません。

はじめて笛を手にする皆さんは判らないのは当然ですので、演奏家、楽器店は責任をもって正しい情報を伝えるべきです。

これは、ドレミの笛、ドレミの曲の是非の問題とは別次元の問題です。一つの楽器名が、それも和楽器の名称が、日本人の手によって、なんちゃって洋楽器の名前にすり替わっていくという、日本文化にとっての問題です。

今の仕事が一段落つきましたら、実践的な行動に移ります・・・

本日は大阪府の最南端、岬町は淡輪(たんのわ)の盆踊りへ!私が笛屋を始めてすぐ、今から20年ほど前からのお付き合い。当時は盆踊りで篠笛が使われているという事実にびっくりで、毎年お邪魔するようになりました。
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京都に拠点を移してから少し足が遠のいておりましたが、今年は桜と一緒に参りました。太鼓と三味線に音頭が乗って笛の音が夜空に響きます^_^ 7年目ぶりくらいに香織さんと笛を吹きながら踊りました。とても素敵な盆踊りです!
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ええ感じの味を出して太鼓を打つのは坂原くん。地元では七本調子・六孔・古典調の篠笛ですが、僕は七本調子・七孔・邦楽調(唄用)の篠笛で吹いているので少し運指が異なりますが、淡輪の盆踊り囃子をお届けします!


ヤグラでも篠笛を吹かせてもらいました。途中、良いシーンがあったので笛を置いて撮影!

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父が打ち娘が吹きたるお盆の調べ
ヤグラを彩るカミの迎え火

先日、第一回「玲月流 篠笛 映像化プロジェクト」会議を行ないました!全社員出席の元、伊勢大神楽の映像なども手がける映像案内人の方をご紹介いただき特別チームを結成!秘密会議の後、京都観光もしたいという声なき声を感じ北野天満宮の御手洗祭へ!篠笛文化研究社の篠笛研究の蓄積、玲月流の目指す清らかで透明な音色、カミあそびの緊張感を音と映像でお伝えすべく…有意義な顔合わせの一日となりましたm(_ _)m
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北野天満宮の北野七夕祭では、御手洗川での足付け神事の後、北野文化研究所のM先生に境内、御土居などをご案内いただきましたm(_ _)m。先日、
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弘道館での歌合せでご一緒させていただいた遠藤湖舟先生の写真空間「星河悠久」も開催中^_^。


本日結成の玲月流「篠笛」映像チームと共に夜の北野天満宮を堪能しました!

篠笛の古典曲は祭囃子。祭囃子は祭ごとに多様ですが比較的高音でピロピロとした指打ち音が特徴です。篠笛らしさ、を身に付けるためには祭囃子を吹くこと必須ですが、中々その機会に巡り合うことは難しいものです。
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なぜならば「祭囃子は誰のものか?」というのもことを考えると、「格好エエから」という理由で安易に吹くことははばかられるからです。祭囃子は、その祭の氏子・崇敬者のもの。

京都、大阪の篠笛教室では「阿波踊り」を、東京の篠笛教室では「阿波踊り」と「江戸囃子」を教えて欲しい、あるいは、教えるようになれば生徒さんが増えるのではというの助言を頂くことが多いのですが、上記のような理由で、現在のところ玲月流では、吹いたり教えたりすることができません。

「阿波踊り」も「江戸囃子」も、数ある祭囃子の中でも、私の琴線に触れる魅力的な旋律で、機会があれば吹いてみたいと思いますが…未だ、そのようなご縁に恵まれていないのです。

自身の演奏や教室の演目に採り入れるべく積極的に動けば、その機会を得ることは可能とは思いますが、そのようなアプローチは、以下のような私の祭囃子を演奏するにあたっての考え方に引っかかってしまいます。

「祭囃子は誰のものか?」という視点に立つと、その祭囃子を用いて、お金を稼がせていただくことになるのですから、可能な限り、私がその祭囃子を吹くことによって得られた成果やお金を、「地元」に還元する活動を続けなければならないと思っています。

玲月流の場合は、現在のところ「岸和田だんじり囃子」と「伊勢大神楽」がそれにあたります。それらの音曲を吹く時、教える時は、「自分が」ではなく「岸和田祭が」、「伊勢大神楽が」という思考に切り替わっています。そして未だ不十分ながら、何か恩返しができないか、貢献できることはないかということを考え続け、随時、実行に移しています。

以上、最近の「プラントハンター騒動(神戸クリスマスツリー・星の王子さま)」を見て、ふと思いました。

ましてや「岸和田だんじり囃子」や「伊勢大神楽」をコンテストの曲として扱うなど、私には中々思い付かない感覚です。

「江戸囃子」の分布やルーツなど、折を見て勉強したいと思います。「ドレミの笛」ではなく「古典調の篠笛」を吹いている「阿波踊り」の連があれば、是非ともお伺いしたいですm(_ _)m。

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