篠笛草子 〜 ほのかに聞こゆるもいとをかし 〜

日本に古くから伝わる竹の横笛「篠笛(しのぶえ)」の随筆。篠笛奏者で篠笛文化研究社代表の森田玲が綴ります。
Essey about "Shinobue" transverse bamboo flute in Japan,by Shinobue player Akira Morita.

(株)篠笛文化研究社が運営するブログです。

カテゴリ: 祭と文化

2月8日は弘道館の観世流能楽師シテ方の林宗一郎さんの「能あそび」に参りました。

結論から述べると、面白いとは予想しておりましたが、予想を上回る面白さで親しみやすい講座でした。

皆さまオススメです!
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玄人のお客さんもいらっしゃいますが、僕のようにお能の初心者の方もたくさん。

ここのところドレミの話ばかりで、精神が萎えておりました。正直、日本人がドレミを自ら選ぶ(選んだ)のであれば、もうどうでもええんちゃうの…と一瞬思うまで精神が病んでおりましたが、昨日の会で、お能を通して、日本文化の深みというか、暖かさというか、先人たちの心の動きみたいなものを感じることができ、やはり、日本人が、このような遺産を自らの手で棄てるのは「もったいない」という想いを強く感じました。

僕のツールは「篠笛」と「神賑」しかございませんが、玉砕覚悟で、もとい、しっかりと戦略を練って、日本文化喪失150年の橋渡しができるようにならねばと改めて思い直した次第です。

能の演目は、その性格から「神・男・女・狂・鬼」に分かれるそうで、今回は「神」について。

ヒトがカミをどう感じてきやか、ヒトがカミにどう接っしてきか、という内容だったかと思います。


カミはヒトが感じた時立ち現われてくる存在ですから、ヒトなくしてカミなしだと思っています。

時の権力者を意識した構成も少なくない、みたいな話もされていたかと思います。

高安流ワキ方の有松遼一さん、林さんのお弟子さんの樹下千慧さんも加わって、略式ながら「翁」と「高砂」お座敷で拝見できるという貴重な機会もございました。

シテ方が神を務める演目が「脇能」で、「翁」に秘められた神事性を受けての演目。


ワキ役の有松さんが、シテ方の林さんとは異なる観点から色々お話をされ、興味深かったです。
写真は「翁飾」(実際は扇は閉じているとのこと)。お能の中で、かつては必ず舞われた「翁」。

そのカミ迎えのための祭壇のようなもの。

鈴の掛軸は弘道館仕様と思いますが、中々お洒落です^_^

神様がご鎮座される神社が思い起こされますし、本居宣長の鈴屋(すずのや)を思い出しました。

お能というと全般的に神妙なイメージがございますが、祭と同じで「神事(秩序)」と「神賑(混沌・狂い)」の二つの局面の絶妙のバランスの上に成り立っているように感じました。

次回の「能あそび」は4月だそうです。

弘道館は今年10周年。講座の予定などはこちらから → https://kodo-kan.com/

そうそう、自分の宣伝を忘れるところでした、
弘道館講座「心で読み解く京の祭と神賑」
3月17日(日)11時から、テーマはズバリ!「祭は誰のものか?」

ハードル上げすぎですが、皆さんと一緒に議論して参りたいと存じます!
詳細 → http://shinobue.blog.jp/archives/9057882.html

昨日は京都芸術センターのへ。シンポジウム・公演「変わりゆく伝統芸能」に参りました。定員の120名は満席で、あっという間の三時間でした。
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僕は基本的には都市祭礼型の祭の見聞が多いので、舞や踊りといった類の芸能に疎く、保存会など担い手の組織が小規模の祭の人たちの想いというか思考を、少しでも感じたいというのが第一の目的で参りました。
 
東京鹿踊(小岩秀太郎)
備中神楽(清水賢二郎)
讃岐獅子舞(十川みつる)
祇園綾傘鉾(原田一樹)
 
俵木悟(成城大学教授)
小林昌廣(情報科学芸術大学大学院教授)

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「伝統」という言葉がはらんでいる「変えてはいけない」という意識と向き合いながら、伝統芸能を現代に生きたかたちで引き継ぐことは、どのようにして可能なのか?というのがテーマで、参加されている皆さん、氏子という範疇を越えに越えて様々な活動をしている方たち。という事前情報を得ていました。
 
僕の周りでは、祭の本来の役割や歴史性を無視して、自分個人のアイデンティティのため、あるいは単に目立ちたいがため、あるいはお金儲けのために祭を利用している人も少なくないので、多少、疑心暗鬼的な気持ちで参ったのですが、果たしてそれは良い意味で大きく裏切られました。
 
個々の事例の紹介をここに記す余裕はありませんが、皆さん、外部に向けるパワーと同じかそれ以上に、自分たちの祭の歴史や社会的意義に対する探求に時間とお金とエネルギーをそそいでおられました。
 
「革新的な保守」と申しましょうか、皆さん「本物の祭バカ」でした。愛を感じました。
 
そして「神賑(かみにぎわい)」という言葉こそ使われてはいませんでしたが、それぞれの祭において、「神事」と「神賑行事」とを明確に意識されており、そのバランスが大切だということは、いちいち指摘されなくて常識レベルという感じでした。
 
このあたりの基本が押さえられていさえすれば、民俗芸能の可能性は無限大で「祭が日本が救うよマジで!」とさえ一瞬ですが思ってしまいました。

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懇親会でも楽しいひとときを過ごさせていただき、様々な意見交換ができて良かったです。
 
拙著『日本の祭と神賑』を読んでくださっていた研究者の方も何人かいらして、今回の出演者の一人の方は、高校生の時に僕の『篠笛事始め』(旧バージョン)を通販でお求めいただいていたようで、嬉しいと同時に、本を出版する責任も改めて痛感。
 
一番の収穫は、久しぶりにドレミ教に入信されていない音楽研究者の方とお話できたこと。
 
「祭の現場でドレミの笛が広まりつつあるが大丈夫なのか?」
 
「オクターブ云々という笛師の方が多いがどうなのか?」
 
「ドレミの笛やのに田楽笛って命名はどういことなの?」
 
といった質問を矢継ぎ早に放ってくださいました。
 
その質問が核心を得ているだけに、受け取るのは簡単で、リボンを付けて放ち返し、とても心地良い篠笛談義となりました。
 
凄いよ!京都芸術センター!アートだけじゃないぜ!
 
凄いぞタロー!もとい、タロだそうです。
 
スタッフの皆さまもお疲れ様でした^_^
 
そろそろ京都に文化庁が移転してきますが、土地柄、京都色のグラサンを通して全国の文化をみることだけはあってはなりません。とは思いつつ、今日のシンポジウムは京都でしたが、どうやら、そうはならないかなという気がした一日でした。
 
良い誕生日プレゼントとなりました。
 
帰りが遅かったし、もう寝てるかなと思って、保険でコンビニでお菓子を買って帰りましたら、ありがたくも、桜と香織さんがケーキを買って待っていてくれました。
 
ワシ「サンキュ!」
桜「サンキュちゃうやろ!ありがとうや!」
 
m(_ _)m

1月27日は弘道館にて講座「心で読み解く京の祭と神賑」でした。

今回は「神事」と「神賑行事」の濃淡を視覚化するという初の試み!概ね成功したかと思います。

この手法をもう少し検証して、各地の祭に当てはめてみたいと思います。

次回は3月17日(日)テーマは「祭は誰のものか?」皆さまのご参加をお待ちしております!

昨年の秋に開催されました「第六回 日本の祭シンポジウム」の報告書が届きました。
私の基調講演「日本の祭と神賑(かみにぎわい)」の部分をPDFにてご覧いただけます。
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★当日の様子→こちら
★報告書→PDF


話し言葉ですので(当日の講演の文字起こし)、さらさらっとお読みいただけるかと思います。

はじめの4ページは枕です(笑)。

内容について

(1)2015年7月発行の拙著『日本の祭と神賑』(創元社)で伝えたかったころが凝縮されております。こちらの本をお持ちの方は是非お読みください!

(2)加えて「神賑の本」では、「提示」に留まっていた「祭は誰のものか?」という問いかけに対する答えを導き出すための、新たな祭の見方、具体的には「祭の社会的意義」と「祭の担い手の属性」について、思い切った論を展開しております。

ご意見など頂ければ幸いです。
また、祭に関わる皆さんに広くお知らせいただければ幸いです。

どうぞよろしくお願い申し上げますm(_ _)m

当日の様子→こちら

御所の西、
今年で10周年を迎える京都・弘道館での講座のご案内です。
遂に五回目!
今回は、
京の三大祭「葵祭(賀茂祭)」「祇園祭(祇園御霊会)」「時代祭」
心で読み解いていきます!

弘道館・講座(アウトライン)
チラシ→PDF


日時   1月27日(日)11時~12時半
会場 有斐斎 弘道館
講師 森田玲
   玲月流初代篠笛奏者 京都市芸術文化特別奨励者
   『日本の祭と神賑』創元社 『日本の音 篠笛事始め』ほか


祭の主催である上賀茂・下鴨神社、八坂神社、平安神宮の創始は、
平安京築造以前、平安時代、東京奠都後とそれぞれ異なり、
時代的にも1000年以上の幅があります。
それ故、祭の形態もその時代の感覚を反映して異なります。

今回の講座では、同じ祭であっても、その場面が
人の心、
すなわち、意識がカミ様に向いている場面なのかヒト同士に向いている場面なのか、
すなわち「神事」か「神賑行事」か、に分けて紐解くとともに、
カミ様そのものの動きにも注目し、その神幸祭を三つの型、
すなわち「ミアレ(御生れ)型」「ミソギ(禊ぎ)型」「オイデ(御出)型」に分けて、
それぞれの祭の本質に迫ります。
カミ様の動き

これまで四回の講座を受けていただいた方は、
景色が晴れるような感覚で京都の三大祭を認識し直していただけると思いますし、
今回が初めてという方は、新しい祭の捉え方を知っていただくことができる
チャンスとなるかと思います。

皆さまお誘い合わせの上、是非ご来場ください!

毎回多くの皆さまにご参加いただいております。
そのお陰もあって、来年度からも講座を継続いただけることとなりました!
日程などの詳細は追ってお知らせいたしますm(_ _)m

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